2006年 09月 06日
記憶の中の自分の姿 |
最近、書店で見つけて題名と目次の項目が面白そうだからと買った本、保坂和志の「世界を肯定する哲学」(ちくま新書)を読んでいて、気になったことがある。
「<自己像>には必ず他者の視線が介在する。(中略)私がいまこうしてワープロに向かってこれを書いていることを意識するとき、私は部屋の一画でワープロに向かっている自分の背中を漠然たる視覚像として持ちはじめる。夢を思い出そうとすれば、夢の中で自分は現実と同じように見て聞いて行動していたはずなのに、途端に<私>としての姿が与えられ、映画の一場面のようにして<私>は思い出す自分自身によって見られ続ける。」
というくだりがあり、それが前提になっているところだ。
というのは、私の場合、私の姿は記憶や夢の中には存在しない。私は私の目から外を覗いている私だけだ。私の体験の記憶は私の目が見たもの、私の耳が聞いたもの、私の嗅覚が感じたものなどなど、五感が体験したことを思い出すものであり、その時何を考えていたかを思い出すことはあっても、外から見た私の像を思い浮かべることはない。
もちろん私の姿を想像することはいくらでもあるが、それは意識してのことであって、たとえば着るものを選ぶ時や初対面の人に会った後に自分の印象はどうだっただろうと考える時などに限られている。
保坂和志は「<私>は<私>の<自己像>を一瞬たりとも放棄することはない。」と書く。
うーん、その感覚をそんなに一般化してしまっていいのかな、と思う。
中学生の頃、友達と、この「記憶の中の自分の姿」の話題が出たことがあった。彼女は俯瞰して自分の姿が見えるタイプの自己像を持っていたので、私は心底驚いた。
それまでの私にとっては想像もしなかったことだった。で、その友達と二人で他のクラスメイトたちにどっちのタイプだか聞いてみた。結果は覚えていないが、たぶんどちらもあったような気がする。私がそんなに特殊な人間だとは思わなかったわけだから。
そんなことがあったにもかかわらず、私はその後もずっと何かを読んだり聞いたりする時、書かれたり話されたりしていることを私がそうする時と同じようにその人の目から覗き見たものとして受け止めていた。
誰かが「私」と書いている時は、私はその「私」の内部からの視点を想像する。でももしかしたらその書き手の意味しているのは俯瞰して眺められている「私」の姿なのかもしれないのに。
結局、想像力っていうのは自分の感覚に縛られているんだな、と思う。
「<自己像>には必ず他者の視線が介在する。(中略)私がいまこうしてワープロに向かってこれを書いていることを意識するとき、私は部屋の一画でワープロに向かっている自分の背中を漠然たる視覚像として持ちはじめる。夢を思い出そうとすれば、夢の中で自分は現実と同じように見て聞いて行動していたはずなのに、途端に<私>としての姿が与えられ、映画の一場面のようにして<私>は思い出す自分自身によって見られ続ける。」
というくだりがあり、それが前提になっているところだ。
というのは、私の場合、私の姿は記憶や夢の中には存在しない。私は私の目から外を覗いている私だけだ。私の体験の記憶は私の目が見たもの、私の耳が聞いたもの、私の嗅覚が感じたものなどなど、五感が体験したことを思い出すものであり、その時何を考えていたかを思い出すことはあっても、外から見た私の像を思い浮かべることはない。
もちろん私の姿を想像することはいくらでもあるが、それは意識してのことであって、たとえば着るものを選ぶ時や初対面の人に会った後に自分の印象はどうだっただろうと考える時などに限られている。
保坂和志は「<私>は<私>の<自己像>を一瞬たりとも放棄することはない。」と書く。
うーん、その感覚をそんなに一般化してしまっていいのかな、と思う。
中学生の頃、友達と、この「記憶の中の自分の姿」の話題が出たことがあった。彼女は俯瞰して自分の姿が見えるタイプの自己像を持っていたので、私は心底驚いた。
それまでの私にとっては想像もしなかったことだった。で、その友達と二人で他のクラスメイトたちにどっちのタイプだか聞いてみた。結果は覚えていないが、たぶんどちらもあったような気がする。私がそんなに特殊な人間だとは思わなかったわけだから。
そんなことがあったにもかかわらず、私はその後もずっと何かを読んだり聞いたりする時、書かれたり話されたりしていることを私がそうする時と同じようにその人の目から覗き見たものとして受け止めていた。
誰かが「私」と書いている時は、私はその「私」の内部からの視点を想像する。でももしかしたらその書き手の意味しているのは俯瞰して眺められている「私」の姿なのかもしれないのに。
結局、想像力っていうのは自分の感覚に縛られているんだな、と思う。
by min_y
| 2006-09-06 18:16
| 本
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