2008年 10月 01日
コンセント |
小学校低学年の頃からなぜか一人暮らしに憧れていた。
そして妹と共用の子供部屋をどこか外国の(そのころの私にとって外国とは欧米だった)アパートの一室だと空想して楽しんでいた。
その部屋は屋根裏部屋で、ベッドがあり、窓の外からパリだかロンドンだかの街を見下ろすことができた。
実際には一階にある畳の部屋に布団を敷いて寝ていたのだが。
ある日曜日の夕方、祖父の誕生日を祝うため、家族全員で食事に出かけることになった。
よそゆきの服に着替えオーバーコートも羽織り、いざ玄関へ、という時、私は一人で子供部屋に戻った。
「さあ、出かけましょう」と、妄想に突入していた私は、自分のアパートのドアである子供部屋の襖を閉め、鍵を鍵穴に入れた。
その瞬間、身体が痺れるような軽い衝撃が走り、いきなり家中の電気が消えた。
アパートの鍵であるヘアピンを壁付けのコンセントに差し込んだからだ。
大人たちが何事が起ったのかと騒ぎ始めた。
そして子供部屋の襖の前で呆然としている私を見つけ、なぜ停電したのかを知った。
私は「どうしてそんな危ないことしたの! 感電して死んでしまうのよ!!」と母にこっぴどく叱られた。
襖と接する柱の脇、壁の下の方についている変わった形の物が、何の用途に使われるのかを私は知らなかったし、ヘアピンを差し込むとどういうことになるのかももちろん知らなかった。私にとっては鍵穴に見立てるのにぴったりのものだったのだ。
空想のアパートごっこのことは私だけの秘密だったから、鍵を掛けようとしたことは言いたくなかった。だから、ただ単に興味本位で悪戯した、と親たちは思っていただろう。それでもアパートごっこのことを知られるよりはましだった。
それから数年後の、5年生の時のことである。
絵の具の筆洗いとして使っていたバケツ型のビスケットの空き缶を学校から持って帰った時、あやまって落っことした。それが偶然にも同じコンセントにぶつかって火花が飛び、またまた電気がショートしてしまった。
であるから、しばらくの間、家族の中で私は「なぜかよく電気をショートさせる子供」というレッテルがくっついていた。
そして妹と共用の子供部屋をどこか外国の(そのころの私にとって外国とは欧米だった)アパートの一室だと空想して楽しんでいた。
その部屋は屋根裏部屋で、ベッドがあり、窓の外からパリだかロンドンだかの街を見下ろすことができた。
実際には一階にある畳の部屋に布団を敷いて寝ていたのだが。
ある日曜日の夕方、祖父の誕生日を祝うため、家族全員で食事に出かけることになった。
よそゆきの服に着替えオーバーコートも羽織り、いざ玄関へ、という時、私は一人で子供部屋に戻った。
「さあ、出かけましょう」と、妄想に突入していた私は、自分のアパートのドアである子供部屋の襖を閉め、鍵を鍵穴に入れた。
その瞬間、身体が痺れるような軽い衝撃が走り、いきなり家中の電気が消えた。
アパートの鍵であるヘアピンを壁付けのコンセントに差し込んだからだ。
大人たちが何事が起ったのかと騒ぎ始めた。
そして子供部屋の襖の前で呆然としている私を見つけ、なぜ停電したのかを知った。
私は「どうしてそんな危ないことしたの! 感電して死んでしまうのよ!!」と母にこっぴどく叱られた。
襖と接する柱の脇、壁の下の方についている変わった形の物が、何の用途に使われるのかを私は知らなかったし、ヘアピンを差し込むとどういうことになるのかももちろん知らなかった。私にとっては鍵穴に見立てるのにぴったりのものだったのだ。
空想のアパートごっこのことは私だけの秘密だったから、鍵を掛けようとしたことは言いたくなかった。だから、ただ単に興味本位で悪戯した、と親たちは思っていただろう。それでもアパートごっこのことを知られるよりはましだった。
それから数年後の、5年生の時のことである。
絵の具の筆洗いとして使っていたバケツ型のビスケットの空き缶を学校から持って帰った時、あやまって落っことした。それが偶然にも同じコンセントにぶつかって火花が飛び、またまた電気がショートしてしまった。
であるから、しばらくの間、家族の中で私は「なぜかよく電気をショートさせる子供」というレッテルがくっついていた。
by min_y
| 2008-10-01 12:24
| 記憶
|
Comments(8)
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konnitiwan at 2008-10-01 19:49
イギリスの児童文学ファンタジー部門に載りそうなお話。
レジンで固められたオブジェの中から聞こえそうですねー。
レジンで固められたオブジェの中から聞こえそうですねー。
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いずいず丸
at 2008-10-01 21:44
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EKreidolf at 2008-10-01 22:38
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min_y at 2008-10-01 23:46
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min_y at 2008-10-01 23:50
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min_y at 2008-10-01 23:53
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HALさん
at 2008-10-03 00:37
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私は、ひらひらのネグリジェを買ってもらった時が、一番お姫さま気分だったww
中学の時に家を建て替えて、洋室を貰った。
シャンデリア風の照明。ばら色のガウン。そしてベッドとライティングデスク♪
気分はやっぱり・・・外国だった。お粗末でしたけど(笑)
中学の時に家を建て替えて、洋室を貰った。
シャンデリア風の照明。ばら色のガウン。そしてベッドとライティングデスク♪
気分はやっぱり・・・外国だった。お粗末でしたけど(笑)
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min_y at 2008-10-03 11:23