新しい夢の記憶 152 |
夜中、どこかへ出かけていた夫と私は早く家に帰るため、閉館している科学博物館の中を通ることにする。それが近道になるからだ。裏口のドアを開けて忍び込み、石造りの階段のある天井の高いホールに出る。ところが、誰もいないはずだったのにその夜に限ってイベントが行われているのだ。多くの人々が行き交い、私たちも受付を通らざるを得なくなる。しかも受付スタッフの学生らしき女性は入場料を徴収していて、大人は1人1万円だという。高額なので度肝を抜かれるが、こっそり入った後ろめたさもあり、払わなければならないと諦める。夫は5千円しか持っておらず、私の財布をみると1万5千円あったのでなんとか二人分の料金を払う。するとスタッフの女性がイラスト付きの地図を見せて「どのコースになさいますか」と尋ねる。どれも小笠原や屋久島などへ船で出かけフィールドワークをするツアーだ。その中から好きなものを選ぶようだが、どれも1日で終わるものではない。私が「どのコースも無理です。うちには高齢の犬がいるのでそれを置いて行くわけにはいきません」というと、受付の女性は納得してくれる。ツアーに参加しないのでお金は返してもらったが、近道のためだけに博物館に入ったと思われたくないので、とりあえず博物館の中を見学することにする。
大きなガラス窓の外に見える空は青く、広い草地の向こうには眼下に森林が広がっている。博物館は街中にあると思っていたが、実は山の上にあるのだ。ふと、草むらの中にキツネがいるのを見つけた。キツネはこちらに横顔を見せ、背筋を伸ばして座っている。「あ、ほらキツネよ!可愛い!」と夫に教える。その向こうの木々の間からクマがいきなり現れた。「わぁクマも、可愛い」と思った瞬間、クマがキツネに襲いかかった。キツネがさっと身をかわしてクマから逃げると、今度はオオカミがやってきた。森の王者のような気品ある美しいオオカミだ。思いがけずオオカミまで見ることができたのだ。すごいね、よかったね、と夫に話している。