2022年 11月 28日
無限 |
ブログ友だちのKcouscousさんのブログに、あるミルク缶の絵にまつわる幼い頃の思い出が書かれていた。そのミルク缶には女の子がミルク缶を持っている絵が描かれていて絵の中のミルク缶にも同じ女の子がミルク缶を抱えている絵が描かれている。そしてその缶にも女の子の絵が…。それが無限に続くことを考えて気が変になりそうで頭が痛くなったそうだ。
実は私も子供の頃、Kcouscousさんのと同じミルク缶に惹きつけられたひとりである。ミルク缶を抱えている女の子の絵がついたミルク缶を雑誌の広告か何かで見かける度にその不思議さに魅了されしばらく頭から離れなかった。色使いなどがちょっと洒落た感じもしてそのミルク缶が欲しくてたまらなかった。
そして、なんと澁澤龍彦も「胡桃の中の世界」でそのミルク缶を見て目眩に似たものを感じたと書いているのだ。
<… 私は幼年時代、メリー・ミルクというミルクの罐のレッテルに、女の子がメリー・ミルクの罐を抱いている姿の描かれているのを眺めて、そのたびに、レリスの味わったのとそっくり同じ、一種の眩暈に似た感じを味わったおぼえがある。キンダー•ブックという絵本の表紙には、子供が小さなキンダー•ブックを見ている絵が描いてあって、その小さなキンダー•ブックには、やはり同じ子供が同じキンダー•ブックを眺めている。これも私には、得もいわれぬ不思議な感じをあたえる絵であった。>
「レリスの味わった一種の眩暈に似た感じ」というのは、澁澤がこのエッセイの冒頭に引用しているミシェル・レリスの「成熟の年齢」の文章に書かれている。レリスの場合はミルク缶ではなくオランダ製ココアの箱だ。箱に描かれたレースの帽子を被ったオランダ娘が同じ絵の描かれた箱を持ちその絵の中の娘もまた同じ箱を持っている、というもの。
以下、渋澤が引用した箇所の一部。
< …同じオランダ娘を数限りなく再現する、この同じ絵の無限の連続を想像しては、ぼくはいつまでも一種の眩暈に襲われていた。>
私は澁澤龍彦の熱心な読者というわけではないが、以前この本をたまたま読んだらあのミルク缶のことが書いてあり、子供の時のミルク缶への憧れのような気持ちを思い出し、印象が深くてその部分だけ覚えていたのだ。で、今回Kcouscousさんのブログを読み、書棚に並んでいた「胡桃の中の世界」の文庫本を引っ張り出してきた。パラパラめくってみるとイラスト付きで「石」とか「螺旋」とか「宇宙卵」とか面白そうなテーマのエッセイが並んでいる。しかし読んだはずなのにほとんど覚えていない。
まあ、そんなものだ。
by min_y
| 2022-11-28 20:51
| 雑感
|
Comments(2)
えっ、minminさん、すごい!
minminさんも同じミルク缶に惹かれていて、さらに澁澤龍彦までなんて!!
先日ふいに思い出して雑談相手の若い人に話すまでは、いままで一度も、誰にも話したことはなかったのです。そんな気持ちになったのは私だけかと思っていましたが、へぇ〜っ、そんなことがあるんだ! 話してみるものですね。面白い!
私が見たのは明治の粉ミルクでしたが、メリー・ミルクって何でしょうね?
矢川澄子はよく読んでましたが、難解澁澤龍彦(というイメージ?^^)は敬遠していました。早速『胡桃の中の世界』読んでみます。ありがとう!
minminさんも同じミルク缶に惹かれていて、さらに澁澤龍彦までなんて!!
先日ふいに思い出して雑談相手の若い人に話すまでは、いままで一度も、誰にも話したことはなかったのです。そんな気持ちになったのは私だけかと思っていましたが、へぇ〜っ、そんなことがあるんだ! 話してみるものですね。面白い!
私が見たのは明治の粉ミルクでしたが、メリー・ミルクって何でしょうね?
矢川澄子はよく読んでましたが、難解澁澤龍彦(というイメージ?^^)は敬遠していました。早速『胡桃の中の世界』読んでみます。ありがとう!
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Kcouscousさん
ね、すごいですよね!
私も誰にも話すこともなく、澁澤のエッセイ読んで「あっ!」と思った後も誰にも話すことなく…(笑)
「メリー・ミルク 缶」で検索してみてください!
まさにこれだった、という画像がいっぱい出てきます!!
引用した部分はこの本の最後の章の「胡桃の中の世界」です。
ね、すごいですよね!
私も誰にも話すこともなく、澁澤のエッセイ読んで「あっ!」と思った後も誰にも話すことなく…(笑)
「メリー・ミルク 缶」で検索してみてください!
まさにこれだった、という画像がいっぱい出てきます!!
引用した部分はこの本の最後の章の「胡桃の中の世界」です。


