2006年 09月 14日
灰色の輝ける贈り物 |
最近読んでとても気に入った本がある。
「灰色の輝ける贈り物」(アリステア・マクラウド著 中野恵津子訳 新潮クレストブックス)だ。
カナダ東海岸の島を舞台にした短編集。島で素朴に生きる人びとの人生の喜びと悲しみが、都会へ出た作者の眼を通して深く丁寧に描かれている。
武骨で誠実で華やかさとは縁のないような漁師や炭坑夫やその息子の心情がしみじみと深い感動を与えてくれる。
冒頭の短編「船」の中で、今では大学で教員をしている息子が、漁師としての人生を全うした父を「ひょっとしたら、父は肉体的にも精神的にも漁師には向いていないのかもしれない」「自分本位の夢や好きなことを一生追いつづける人生より、ほんとうはしたくないことをして過ごす人生の方が、はるかに勇敢だと思った」と回想するが、この短編集に登場するのはそういう意味での勇敢な人々なのだ。
生まれ育った炭坑の町を出て行こうとしている大人になりかかっている少年の話、可愛がっていた馬を貧しさのために手放さなければならなくなった家族の話、どれもストーリーとしては起伏があるわけではなく地味なつくりだが、ぜひ原作で読んでみたいと思う滋味豊かで美しい作品群だ。
そういえば、舞台はイギリスだが、映画「リトルダンサー」も炭鉱の町で生きる男たちが魅力的に描かれていたことを思い出す。バレエダンサーを目指す天才少年の父と兄が炭坑夫で、最後の方など涙なしには見られなかった。
もちろん「リトルダンサー」もマクラウドの小説も、舞台が炭鉱の町だから感動的なのではなくて、人々の複雑な深い情愛が普遍的なものとして私たちの心に迫ってくるからなのだが。
マクラウドは非常に寡作な作家だということだが、他にも翻訳された本が出ているようなので、探して読むのが楽しみだ。
「灰色の輝ける贈り物」(アリステア・マクラウド著 中野恵津子訳 新潮クレストブックス)だ。
カナダ東海岸の島を舞台にした短編集。島で素朴に生きる人びとの人生の喜びと悲しみが、都会へ出た作者の眼を通して深く丁寧に描かれている。
武骨で誠実で華やかさとは縁のないような漁師や炭坑夫やその息子の心情がしみじみと深い感動を与えてくれる。
冒頭の短編「船」の中で、今では大学で教員をしている息子が、漁師としての人生を全うした父を「ひょっとしたら、父は肉体的にも精神的にも漁師には向いていないのかもしれない」「自分本位の夢や好きなことを一生追いつづける人生より、ほんとうはしたくないことをして過ごす人生の方が、はるかに勇敢だと思った」と回想するが、この短編集に登場するのはそういう意味での勇敢な人々なのだ。
生まれ育った炭坑の町を出て行こうとしている大人になりかかっている少年の話、可愛がっていた馬を貧しさのために手放さなければならなくなった家族の話、どれもストーリーとしては起伏があるわけではなく地味なつくりだが、ぜひ原作で読んでみたいと思う滋味豊かで美しい作品群だ。
そういえば、舞台はイギリスだが、映画「リトルダンサー」も炭鉱の町で生きる男たちが魅力的に描かれていたことを思い出す。バレエダンサーを目指す天才少年の父と兄が炭坑夫で、最後の方など涙なしには見られなかった。
もちろん「リトルダンサー」もマクラウドの小説も、舞台が炭鉱の町だから感動的なのではなくて、人々の複雑な深い情愛が普遍的なものとして私たちの心に迫ってくるからなのだが。
マクラウドは非常に寡作な作家だということだが、他にも翻訳された本が出ているようなので、探して読むのが楽しみだ。
by min_y
| 2006-09-14 19:07
| 本
|
Comments(0)