日常と夢の記憶

ドクダミ

　中庭のドクダミの花が満開だ。
　この前雑草を抜いた時、ドクダミだけはちょうど蕾をつけていたところだったので
　花を楽しんでから抜こうと思い、そのままにしておいたのだ。
　そういえばドクダミ茶って身体にいいらしいし、試しに作ってみようと思う。
　
　ネットで作り方を検索してみた。
　どうやら花が咲いている時に刈り取るらしい。
　 うーん、せっかく可憐な花をつけているのにこれを刈り取ってしまうのは残念だ。
　ドクダミ茶を作ったとしてもまずそうで飲み続けるとは思えないし。

　ということで、花が咲いているうちは刈り取るのをやめにした。
　　

庭のバラ

バラの花が咲き始めた。
　
殺虫剤も使わないし手入れもほとんどしない怠け者ガーデナーの庭にもバラは咲いてくれた。よく見ると葉っぱは虫喰い穴だらけで花だってひとつひとつは貧弱かもしれない。でもこんなにたくさん花をつけてくれるなんて生命力のある花だったんだ、バラって。
　ロマンティックで豪華な花の代名詞のようなバラだけど、種類は多くて野バラに近いものはやはり丈夫みたいだ。ホームセンターで苗を買った数年前は、張り切ってバラの育て方の本など読んでいたけど３日坊主で終わってしまった。
　
今となってはこれが何という名前のバラなのかも忘れてしまった。それでも年毎に成長し、花を咲かせ、馥郁たる香りを漂わせ、私に幸福感をもたらしてくれている。
　

雷がこわい

　午前中は晴天だったのに午後３時頃から雷雨。家で留守番させてるラスクのことが気にかかる。私たちが家にいても、遠い雷のかすかな音にさえおびえて震えてしまう弱虫犬なのだ。ひとりで心細くて、机の下か廊下の隅っこでうずくまって震えてるだろうな。クンクン泣いているかもしれない。
　５時半に事務所を出ると雨はやんでいるが、大急ぎで家へ帰る。駅前のスーパーでトマトと牛乳だけ買って家へ向かう坂道を下りていると雨がぽつりぽつり降り始めてきた。傘をさすまでもないかな、と思ってそのまましばらく歩いていると急激に雨足が強くなり大慌てで傘をさす。途中の信号待ちのあたりからは滝のような土砂降りで、そこから家までのたった５分の距離で、靴の中は水浸し、スカートはずぶ濡れという状態。
　家に帰るとラスクは「こわかったよう、いまもこわいよう、」と遠吠える。雷も激しく鳴り始めているのだ。散歩どころじゃない天候だ。雷雨が通り過ぎるのを待つしかない。
　雷鳴がこわくて机の下に逃げ込んだラスクは息苦しそうなくらい呼吸が荒くなっていて、撫でてやると下半身がガタガタ震えている。「怖くないよ。そばにいるから大丈夫。それにここのおうちは安全なの。心配しなくていいよ。」と声をかけながら撫でてやる。　
　
　ラスクがこわいもの。雷、強風、獣医さんの診察台、お風呂に入れられること、メジャーで身体の寸法を計られること、その他いろいろ。

　雷が遠くに去り、雨足も若干弱くなったので散歩に出ることにする。玄関に新聞紙を敷き、ラスクにレインコートを着せて。
　散歩に出たとたん、ラスクは別犬になる。遠くで雷が鳴っても少しこわそうな表情をするだけ。雨も平気。なのになんで家では弱虫なのかな。
　

新しい夢の記憶 ２

昨夜の夢

「男の子たちに食べさせるのは半熟卵でいいから」というようなことをおばあさんが言う。
７０歳はこえていると思われるこのおばあさんのいう「男の子たち」とは、彼女の息子たちのことであり、いい大人たちだ。
おばあさんにはたくさんの子供がいるが、ずっと女の子しかできず、年を取ってからようやく二人の男の子を授かったのだ。
だからいつまでたっても彼らはこの家族の中で「男の子」としてかわいがられているようだ。
　　
明日は親戚が集まる法事のようなものがあるらしい。
私と私の母がどうこの家族と関わっているのかわからないが、なぜか今夜一晩この家で留守番することになっているようなのだ。
それで、明朝真っ先にやってくる息子たちの朝食の準備をするようにおばあさんに頼まれている。
　
母はそのことに納得がいかないらしい。
おばあさんには娘たちだって何人もいるのになぜ私たちが、というようなことをつぶやいている。
明日の朝Hさん夫婦と会って事前に打ち合わせておきたかったのにそれができなくなった、とも言っている。

休日

　休日としては久しぶりの晴れ。朝から蒸し暑い。

　朝食を済ませて家を掃除する。５月に入ってからは特に犬のラスクの抜け毛が多くなって、毎日しても掃除が追いつかない。掃除の後、３０分くらいかけて念入りにブラッシングしてやる。弱虫ラスクはブラッシングも怖いらしい。最近になってようやくブラッシングされる時、気持ち良さそうな顔をするようになった。

　夫の運転する車でOKストアへ行く。OKストアは私たちのお気に入りの激安スーパーで、休日に車で行って山ほど買い物する。青森産の鶏の胸ひき肉が100g4９円という安値なのでいつも買ってラスクのごはんにしている。パン売り場のレトロフランスとノアレザンと食パンはイーストフードを使っていないし値段の割にとてもおいしい。まとめて買って冷凍しておく。

　午後は庭の草抜き。しばらくの間放っておいたら雑草がものすごい勢いではびこり始め（中庭なんてまるでドクダミ畑！）気になってはいたのだが休日は雨が多かったり他に用事があったりでようやく今日になって手を付けることができたのだ。
　タンポポ、ヒメジョオン、カラスノエンドウ、などなど雑草とは云えども趣き深いものも多く、抜いてしまうのは忍びない。でも野中の一軒家に住んでいるならともかくここでは種が飛び散ってご近所迷惑になってしまうかも。それに荒れ果てた庭は泥棒に狙われやすいとか聞いたことがあるし。

　雑草とりが一段落した頃にちょうど雨が降り始める。夕立のような激しい雨が１〜２時間。いっきに涼しくなる。
　雨の音を聞きながら、テレビでカメラマン木村伊兵衛の特集番組を見る。フィルムに残された昭和の人びとの日々の暮らしの風景。まるで見る人自身の記憶であるかと錯覚してしまうほど自然な写真世界。
　今度書店へ行ったら写真集をさがして買おうと思う。

　テレビを見終わって、久しぶりにピアノを弾く。バッハの平均率を何曲かと、ショパンのノクターンを数曲。静かな曲ばかりを選んで。

　夕方のラスクの散歩は夫と一緒に行く。平日は朝の散歩が夫、夜が私、という役割になっているが、休日は二人で一緒のことが多い。ラスクはみんなで散歩に行くのが嬉しい様子だ。上り坂などで私が遅れると、時々ふり返って私がいるかを確認している。
　
　雨上がりの夕方の散歩。黒々と浮かぶ雲とその向こうにある透明感のある群青色の宵の空とのコントラストが美しい。金星だろうか、一番星がいつもより輝いて見える。その下を飛行機の灯りがゆっくりと通過する。

　充実感のある、幸福な一日の終わりだ。